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クリスティアンの『荷車の騎士ランスロット(Le Chevalier de la charrette)』において初めて、彼は主人公となり、正式な名前「ランスロット・デュ・ラック(湖のランスロット)」を与えられる<ref>William Farina, 『クリスティアン・ド・トロワとアーサー王物語の夜明け』(2010年)。p. 13: 「厳密に言えば、ランスロット・デュ・ラック(「湖のランスロット」)という名は、クリスティアンのアーサー王物語デビュー作『エレックとエニード』(1674行目)において、円卓の騎士の一員として初めて登場する。</ref>」。この名は後に『ランスロット・グレイル』のフランス人作者たち、そしてトマス・マロリーによって採用された<ref>エリザベス・アーチボルド、アンソニー・ストックウェル・ガーフィールド・エドワーズ著『マロリー研究事典』(1996年)。p. 170: 「これは我が主ランスロット・デュ・ラックの書なり。彼の全ての武勇と騎士道精神、聖杯の到来、そして善き騎士ガラハッドが成し遂げた聖杯探求の物語を収める」</ref>。 クレティエンは読者がランスロットの背景をよく知っているかのように扱うが、今日ランスロットに一般的に結びつけられる特徴や武勇伝の大半はここで初めて言及された。物語は、ランスロットがアーサー王の妻グィネヴィア王妃に狂おしい恋心を抱き、彼女をメリアガント王子(同じく彼女に片思いしていたが全く報われなかった)に誘拐された後、危険な異界の地ゴレから救い出すまでのを描く。 | クリスティアンの『荷車の騎士ランスロット(Le Chevalier de la charrette)』において初めて、彼は主人公となり、正式な名前「ランスロット・デュ・ラック(湖のランスロット)」を与えられる<ref>William Farina, 『クリスティアン・ド・トロワとアーサー王物語の夜明け』(2010年)。p. 13: 「厳密に言えば、ランスロット・デュ・ラック(「湖のランスロット」)という名は、クリスティアンのアーサー王物語デビュー作『エレックとエニード』(1674行目)において、円卓の騎士の一員として初めて登場する。</ref>」。この名は後に『ランスロット・グレイル』のフランス人作者たち、そしてトマス・マロリーによって採用された<ref>エリザベス・アーチボルド、アンソニー・ストックウェル・ガーフィールド・エドワーズ著『マロリー研究事典』(1996年)。p. 170: 「これは我が主ランスロット・デュ・ラックの書なり。彼の全ての武勇と騎士道精神、聖杯の到来、そして善き騎士ガラハッドが成し遂げた聖杯探求の物語を収める」</ref>。 クレティエンは読者がランスロットの背景をよく知っているかのように扱うが、今日ランスロットに一般的に結びつけられる特徴や武勇伝の大半はここで初めて言及された。物語は、ランスロットがアーサー王の妻グィネヴィア王妃に狂おしい恋心を抱き、彼女をメリアガント王子(同じく彼女に片思いしていたが全く報われなかった)に誘拐された後、危険な異界の地ゴレから救い出すまでのを描く。 | ||
マティルダ・ブルックナーの言葉を借りれば、「クリスティアン以前のものは不確かだが、彼の版が、並外れた武勇がアーサー王の王妃への愛と不可分である騎士ランスロットの、その後のすべての物語の出発点となったことは疑いない」<ref>ランスロット・聖杯物語研究, キャロル・ドーヴァー , 2003, ボイドール・アンド・ブリューワー, 中心の再定義:詩と散文のシャルレット, pages:95?106, jstor=10.7722/j.ctt9qdj80. 15, isbn:9780859917834, contributor-first:Matilda Tomaryn Bruckner, contributor-link:Matilda Bruckner, https://www.jstor.org/stable/10.7722/j.ctt9qdj80.15</ref> | マティルダ・ブルックナーの言葉を借りれば、「クリスティアン以前のものは不確かだが、彼の版が、並外れた武勇がアーサー王の王妃への愛と不可分である騎士ランスロットの、その後のすべての物語の出発点となったことは疑いない」<ref>ランスロット・聖杯物語研究, キャロル・ドーヴァー , 2003, ボイドール・アンド・ブリューワー, 中心の再定義:詩と散文のシャルレット, pages:95?106, jstor=10.7722/j.ctt9qdj80. 15, isbn:9780859917834, contributor-first:Matilda Tomaryn Bruckner, contributor-link:Matilda Bruckner, https://www.jstor.org/stable/10.7722/j.ctt9qdj80.15</ref>。フランス国立図書館のダニエル・ケレルによれば、「クリスティアンが描いたランスロットという人物は、愛する女性への想いを高揚と恍惚の極限まで押し進める宮廷愛の理想像である……愛に支配されたランスロットは、もはや周囲の世界を見失い、自らの存在すら認識できなくなっている。」ということになる。 | ||
<blockquote>愛に麻痺し、愛する女性を想ううちに全ての能力を失ってしまう叙情的な激しい愛の持ち主として、クリティエンはランスロットを女王への情熱に完全に囚われた騎士とした。欲望に圧倒され、彼は繰り返し周囲の現実を忘却する。[...]騎士は、キリストが神の殉教者であるように、貴婦人が愛の殉教者となる傷を負うことも厭わない。ここで貴婦人は騎士が崇拝する偶像となる。ランスロットは、祭壇の前に立つように女王が待つ寝床の前に跪き、彼女を聖遺物のように崇拝し続け、そこに全幅の信頼を置く。ランスロットとグィネヴィアの愛の夜は、五感の饗宴として、また他のいかなる恋人たちも知らぬ、より大きく深い、言葉に尽くせぬ歓喜として描かれる。しかし夜明けと共に訪れる別れは、絶望のうちに去る騎士の苦しみを再び呼び覚ます。「体は去れど、心は残る」である。<ref>https://essentiels.bnf.fr/fr/focus/77f00f63-0679-4f6f-8c83-24a70a965830-lancelot-et-exces-lamour, Lancelot et les excès de l'amour, BnF Essentiels</ref></blockquote> | <blockquote>愛に麻痺し、愛する女性を想ううちに全ての能力を失ってしまう叙情的な激しい愛の持ち主として、クリティエンはランスロットを女王への情熱に完全に囚われた騎士とした。欲望に圧倒され、彼は繰り返し周囲の現実を忘却する。[...]騎士は、キリストが神の殉教者であるように、貴婦人が愛の殉教者となる傷を負うことも厭わない。ここで貴婦人は騎士が崇拝する偶像となる。ランスロットは、祭壇の前に立つように女王が待つ寝床の前に跪き、彼女を聖遺物のように崇拝し続け、そこに全幅の信頼を置く。ランスロットとグィネヴィアの愛の夜は、五感の饗宴として、また他のいかなる恋人たちも知らぬ、より大きく深い、言葉に尽くせぬ歓喜として描かれる。しかし夜明けと共に訪れる別れは、絶望のうちに去る騎士の苦しみを再び呼び覚ます。「体は去れど、心は残る」である。<ref>https://essentiels.bnf.fr/fr/focus/77f00f63-0679-4f6f-8c83-24a70a965830-lancelot-et-exces-lamour, Lancelot et les excès de l'amour, BnF Essentiels</ref></blockquote> | ||
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<blockquote>機嫌が良い時は、彼の目は輝き、笑い、喜びに満ちていた。しかし怒ると、その目は燃えさかる炭のように見え、頬骨から赤い血の滴がにじみ出ているようだった。ランスロットは怒れる馬のように鼻を鳴らし、歯を食いしばってぎしぎしと鳴らし、その口から吐き出される息は全て赤く染まっているように見えた。そして彼は戦場のラッパのように叫び声をあげ、歯で噛みしめているものや手で握りしめているものは何でも引き裂いてしまった。すなわち、彼が激怒している時は他の何ものにも気づかず、このようなことは幾度となく起こった。<ref name=young/></blockquote> | <blockquote>機嫌が良い時は、彼の目は輝き、笑い、喜びに満ちていた。しかし怒ると、その目は燃えさかる炭のように見え、頬骨から赤い血の滴がにじみ出ているようだった。ランスロットは怒れる馬のように鼻を鳴らし、歯を食いしばってぎしぎしと鳴らし、その口から吐き出される息は全て赤く染まっているように見えた。そして彼は戦場のラッパのように叫び声をあげ、歯で噛みしめているものや手で握りしめているものは何でも引き裂いてしまった。すなわち、彼が激怒している時は他の何ものにも気づかず、このようなことは幾度となく起こった。<ref name=young/></blockquote> | ||
=== | === アーサー王の宮廷 === | ||
ランスロットの初期の冒険(マロリーにも収録<ref>Archibald Elizabeth, https://books.google.com/books?id=0rHZJ_oedKgC& pg=PA172, A Companion to Malory, Edwards Anthony Stockwell Garfield, 1996, Boydell & Brewer Ltd, isbn:978-0-85991 -443-7</ref>)は「美しき知られざる者(Fair Unknown)」のタイプに属する。<ref>ウォルターズ・ロリ・J., https://books.google.com/books?id=HEoeCwAAQBAJ& pg=PR14, ランスロットとグィネヴィア:事例研究集, 2015-12-03, Routledge, isbn:978-1-317-72155-0</ref>これらは、クリスティアンの物語を発展させ、彼のアイデンティティ探求とグィネヴィアへの愛を絡み合わせている<ref>https://books.google.com/books?id=eI5_Bxx8dg8C&pg=PR9, 湖のランスロット, 2000, Oxford University Press, isbn:978-0-19-283793-6</ref>。ランスロットは初め名もなき白き騎士(Chevalier Blanc)とし登場し、銀の鎧を身にまとい白馬に乗っていた<ref>https://books.google.com/books?id=FY3P_DUGTyAC&pg=PA56, Arthurian Literature XXV, 2008, Boydell & Brewer Ltd, isbn:9781843841715</ref> 若いランスロット(18歳と主張しているが、後に実際には15歳であることが明らかになる<ref>https://books.google.com/books?id=oV967qQ0qiEC&pg=PA52, The Lancelot-Grail Cycle: テキストと変容, isbn:9780292786400, キブラー・ウィリアム・W., 2010, テキサス大学出版局</ref>)は、湖の貴婦人の導きによりアーサー王の王国ログレスに到着し、彼女の要請で王から騎士に叙任される。湖の貴婦人は、あらゆる魔法を解く強力な魔法の指輪をランスロットに授ける(クリスティアン版では、彼の匿名の妖精の養母も同様の行為を行う; 後世の『ランスロット』では、これをグィネヴィアから授かったものと後付けで設定している<ref>https://books.google.com/books?id=aQSkzRstpJYC&pg=PA148, Lancelot-Grail: ランスロット、第III部, isbn:9781843842354, Lacy Norris J., 2010, Boydell & Brewer</ref>)。 | |||
ランスロットは、アーサー王の甥であるガウェインを悲嘆の塔のエピソードで捕囚から解放した後、ついにアーサー王の精鋭集団である円卓の騎士の一員となることを承諾する<ref name=arts/>。彼はその後、アーサー王の最も親密で信頼される友人の一人となり、最高の騎士となる。ランスロットはその立場から、ロージアン(スコットランド)におけるサクソン人との戦いで決定的な役割を果たす。この戦いで彼は、再びガウェインとアーサー王をサクソン岩城から救い出し、サクソン人の魔女姫カミーユを捕らえたのである。さらに彼は、半巨人ガレオーによるアーサー王国の征服を単身で阻止し、ガレオーを説得してアーサー王の陣営に加わるよう導いた。 | |||
頭韻法『モルト・アルチュール』の記述を更に拡張し、マロリーはランスロットをアーサー王のローマ戦争における主要指揮官の一人として描いた。最終決戦である皇帝ルキウスとの戦いでは、負傷したベディヴィアをランスロット自ら救出する場面がある<ref>Lumiansky R. M., 2019, Malory's Originality: 『ル・モルト・ダルサー』の批判的研究』, JHU Press, isbn:9781421433110, https://books.google.com/books?id=2BK9DwAAQBAJ& pg=PT70</ref>。『死の書』の大部分は年代順に構成されていないため、ローマのエピソードは実際にはマロリーの第2巻内で展開され、ランスロットの青年期を描く第3巻に先行している。 | |||
=== グィネヴィアと流浪の騎士 === | |||
ランスロットが宮廷に到着するやいなや、彼と若き王妃グィネヴィアは奇妙な魔法の絆によって恋に落ちる。散文版ランスロット物語における彼の冒険の一つは、アーサー王の敵マレアガントによって誘拐されたグィネヴィアを救い出すことだった。出来事の正確な時期や順序は資料によって異なり、詳細に語られるのは特定の資料にのみ見られる。マレアガントのエピソードは、実際には(後世のより長い版本以前の)原初的な非循環形式の散文『ランスロット』の終結部を画するもので、英雄の幼少期と青年期のみを語っている<ref>Luke Sunderland, 2010, Metaphor, metonymy and morality: ウルガタ・サイクル, 古フランス語叙事詩サイクル:倫理と道徳の狭間における英雄主義, pages63-100, Boydell & Brewer, isbn:9781846158063, https://www.cambridge.org/ core/books/old-french-narrative-cycles/metaphor-metonymy-and-morality-the-vulgate-cycle/FBA7A495C066A0B0BA32F159F9A5ED16}}</ref>。散文版『ランスロット』では、彼はアーサー王ではなくグィネヴィアによって実際に騎士に叙任される<ref>https://books.google.com/books?id=v40auRW-8C4C&pg=PA63, The Knight Without the Sword: A Social Landscape of Malorian Chivalry, isbn:978-0-85991 -603-5, Kim Hyonjin, 2000, Boydell & Brewer</ref>。 | |||
マロリーの『アーサー王の死』における要約版では、ランスロットの叙任は王によって行われ、メレアガントから女王を救出することと、ランスロットと王妃の関係が肉体的に成就することは、何年も先送りされる。マロリーが描写するところによれば、素手で牢獄の鉄格子を破った後、「ランスロット卿は王妃と寝床を共にし、傷口に痛みを感じることもなく、夜明けまで快楽と交わりを楽しんだ」という<ref>Archibald Elizabeth, Edwards Anthony Stockwell Garfield, 1997, A Companion to Malory, Boydell & Brewer Ltd, isbn:9780859915205, page22, https:// books.google.com/books?id=oqUDKCX7bzYC&pg=PA22</ref>。この不倫という背信行為は、マロリーの物語では後半、ランスロットが聖杯探求に失敗した後に起こる。とはいえ、マロリーが採用した「フランス語本」の出典と同様に、マロリーのランスロットも物語の早い段階でグィネヴィアに仕えることに身を捧げている。『ヴルガート・サイクル』におけるランスロットの初期の放浪騎士的冒険の数々(すべてではない)は、マロリーの編纂作品に取り入れられている。これらのエピソードは、アーサー王の騎士数名を捕虜にしていた強大な悪党タークインを倒すものから、二人の巨人騎士を討ち取るものまで多岐にわたる(ヴルガート版では、その後地元民がランスロットを領主と宣言し、彼に留まるよう説得しようとする<ref>https://books.google.com/books?id=9bQxHyxm3pIC& pg=PA76, Malory's Library: The Sources of the Morte Darthur, Ralph C.Norris, 27 April 2008, DS Brewer, isbn:978-1-84384-154-8</ref>)。彼はまた数々の馬上槍試合で勝利を収めており、その中にはマレアガントの父であるバグデマグス王に代わって戦った際のものも含まれる。 | |||
ランスロットは自らの活動を貴婦人グィネヴィアに捧げ、彼女の名のもとに騎士として行動する。ある時、グィネヴィアが自身の愛を疑っていると信じ込まされ、狂気に陥るが、湖の貴婦人によって発見され癒される<ref>La legende du roi Arthur, BnF ? expositions.bnf.fr, http://expositions.bnf.fr/arthur/grand/fr_114_352.htm, 7 October 2018</ref>。ランスロットが一時的に正気を失う別の例は、カミーユに短期間囚われた際に生じたが、こちらも湖の乙女によって癒やされる。彼の繰り返される狂気の怒りの発作(特に「性的魅力のある女性の前で起きる」<ref>Plummer, John F., 1996, Frenzy and females: Subject formation in opposition to the other in the prose 『Lancelot』, Arthuriana, volume6, issue4, pages45-51, doi:10.1353/art. 1996.0027, jstor:27869221, s2cid:161934474</ref>)や自殺傾向(通常はガウェインまたはガレホートの死に関する虚偽または真実の知らせに関連)は、ヴルガート版全体を通じて頻繁に現れ、他の版でも時折見られる。彼はまた、通常は騎士道精神によって自己抑制しているが、この抑制は行動を起こす際に容易に外れてしまい、ランスロットの中により暗く暴力的な側面を秘めている可能性を残している<ref>Jesmok, Janet, 007, The double life of Malory's Lancelot du Lac, Arthuriana, volume17, issue4, pages81-92, doi:10.1353/art. 2007.0042, jstor:27870873, s2cid:161443290</ref>。それにもかかわらず、ウルガタ版『ランスロット』は「世の中の騎士の中で、彼はいかなる貴婦人や乙女をも傷つけることを最も嫌った人物であった」と記されている<ref>https://books.google.com/books?id=aQSkzRstpJYC&pg=PA138, ランスロット・グレイル: ランスロット、第III部, isbn:9781843842354, レイシー ノリス J., year=:2010, ボイドール・アンド・ブリューワー</ref>。 | |||
ある時、ランスロット(当時はまだ単に白の騎士として知られていた)はブリテン島で城を征服し、自らのものとする。その城はジョイアス・ガード(かつてのドロラス・ガード)として知られ、そこで彼は自らの本名と出自を知り、名高い祖先ランスロットの名を自らの名とする。アーサー王の助力により、ランスロットはクラウダス(ウルガータ版では同盟したローマ軍も)を打ち破り、父の王国を奪還する。しかし彼は再び、従兄弟のボースとライオネル、そして非嫡出の異母兄弟エクター・ド・マリス(エクター)と共にキャメロットに残ることを決意する。 | |||
=== グィネヴィアのライバルたちとガレホート === | |||
ランスロットは円卓の騎士の中でも最も有名な一人となり、マロリーの『ハンガリーのアーリー卿』のエピソードでは世界一の騎士と称されるほどであった。また、ヴァルガートの『ランスロット』の序盤で巨女のマルオーの女主人に捕らえられたことを皮切りに、多くの女性たちから求められることになった。邪悪な魔女ヘラウェスは彼を執拗に求め、マロリーの危険な礼拝堂のエピソードで生け捕りにも殺害にも失敗すると、彼女は間もなく悲しみで自ら命を絶った。同様に、アストラットのエレイン(『俗語版』では「エスカロットの乙女」、現代では「シャロットの乙女」として知られる)も、ランスロットへの片思いの悲しみから命を落とす。一方、ランスロットは公言された処女の乙女と互いに惹かれ合いながらもプラトニックな愛に落ちた。マロリーは彼女をアマブルと呼んでいる(ヴルガートの原典では無名)。 | |||
ランスロットは、黒騎士<ref name=":1">Bruce, The Arthurian Name Dictionary, page=200</ref> (別の機会には赤騎士にも変装している)となって<ref name=":1"/><ref>Lacy Norris J, Lancelot-Grail 10: 『ウルガタ版及びポスト・ウルガタ版聖杯物語サイクル章節要約と固有名詞索引』, Boydell & Brewer, 2010, isbn:9781843842521, pages40</ref> 、強大な外国の侵略者、ガレホート王子(ガラハウト)との戦いで決定的な役割を果たす。ガレホートは勝利を目前にアーサーの王国を征服しようとしていたが、ランスロットの驚くべき戦場での活躍に感銘を受け、野営地で一夜を共にする特権と引き換えに彼に恩を与えることを申し出る。ランスロットはこれを受け入れ、恩を用いてガレホートにアーサーへの無条件降伏を要求する。ガレホートは自らランスロットの臣下を名乗り、王の同盟者となる。後にランスロットが円卓の騎士に加わった後、彼もまた円卓に加わるのである<ref name=arts/>。 | |||
ガレホートが持っているランスロットへの情熱の正確な性質は、現代の学者の間で議論の的となっており、親密な友情と解釈する者もいれば、ランスロットとグィネヴィアの間のような愛と解釈する者もいる<ref>Todd W., Reeser Lewis Carl, Seifert, 2008, Entre Hommes: French and francophone masculinities in culture and theory, Associated University Presse, isbn:9780874130249, https://books.google.com/books?id=x2zd2JyROkAC&pg=PA53</ref>。ガレホートはランスロットを独占することに執着している。自ら進んでランスロットに公然と従属する一方で、グィネヴィアやアーサー王に対しては常に彼を独占しようとする行動を取り、ガウェインが「ガレホートはどの騎士が自分の貴婦人に対して抱く嫉妬よりも、ランスロットに対して強い嫉妬を抱いている」と評するほどである<ref name=arts>https://books.google.com/books?id=DtXMstWzw5QC&pg=PA115, The Arts of Friendship: 中世および初期ルネサンス文学における友情の理想化, Reginald Hyatte, 1994年4月27日, BRILL, isbn:90-04-10018-0</ref>。当初、ランスロットはガレホートの故郷ソレロワで彼と共に暮らす。ランスロットが「偽りのグィネヴィア」事件で魔法にかけられたアーサー王から彼女を救った後、グィネヴィアもそこに合流する<ref>本物のグィネヴィアは立ち上がる, 2017-12-17, Medievalists.net, http://www.medievalists.net/2017/12/will-real-guinevere-please-stand/, 2019-06-08</ref>。その後、アーサーはガレホートを円卓の騎士に招く。ガレホートはまた、グィネヴィアにランスロットの愛情に応えてもよいと説得する人物でもある<ref name=arts/>。散文版『トリスタン』およびその派生作品(後期の『クエステ』における記述を含む)では、復讐に燃えるコーンウォールのマーク王から逃れる恋人たちトリスタンとイゾルデを、ランスロット自身が自らの城に匿う。 | |||
ランスロットはグィネヴィア王妃への忠誠を貫き、アーサー王の妹で魔術師であるモルガン・ル・フェイの執拗な求愛を拒む。モルガンはランスロットを常に誘惑しようとし、彼に対しては情欲的な愛と憎しみを等しく激しく抱いていた。モルガンはランスロットを繰り返し誘拐し、ある時はセビルを含む魔術の女王たちと共に集団で拉致したこともある。ある時(散文『ランスロット』に記される通り)、モルガンはガウェインを救うため一時的にランスロットを解放することを承諾するが、その条件としてランスロットは直ちに彼女のもとへ戻ることを要求する。さらに彼女は、ランスロットが一年間グィネヴィアやガレホートのどちらとも一切関わらないことを追加条件として彼を解放する。この条件によりランスロットは半狂乱に陥り、ガレホートは彼への渇望から病に倒れる。ガレホートはランスロットの自殺という偽りの噂を聞き、苦悩の末に命を落とす。 | |||
=== | === エレイン、ガラハッド、そして聖杯 === | ||
コーベニックのエレイン姫は、フィッシャー・キングの娘であり、ランスロットに恋をするが、他の者たちよりも成功する。魔法の助けを借りて、エレイン姫はランスロットを騙し、自分がグィネヴィアであると信じ込ませ、こうして彼を欺瞞によって彼女と寝させた<ref>Mike Ashley, The Mammoth Book of King Arthur, 2005, p582, Running Press, https://books.google.com/books?id=ni119Nfo_QEC&pg=PA582, isbn:978-0-7867 -1566-4</ref>。そうして妊娠した結果、息子ガラハッドが誕生するが、エレインは彼を父のいない環境で育てさせる。ガラハッドは後に、マーリンが予言した「聖杯を見つける偉業を成し遂げる運命にある善き騎士」として現れる。しかしグィネヴィアは二人の関係を知り、エレインが魔法の策略でランスロットと二度も関係した上、それがグィネヴィア自身の城で起こったと知ると激怒する。彼女はランスロットを責め、キャメロットから追放する。彼女の反応に打ちのめされたランスロットは再び狂気に陥る。ランスロットは逃亡し姿を消し、(二年か五年)荒野をさまよう。この間、後悔に苛まれたグィネヴィアや他の者たちが彼を探し求める。やがて彼はコルベニックに戻り、そこでエレインに正体を見破られる。聖杯をヴェール越しに見せられたランスロットは狂気を癒され、その後エレインと共に人里離れた島で暮らすことを選ぶ。彼はそこで「邪悪な騎士(Chevalier Malfait、マロリーも用いたフランス語形)」の偽名で知られるようになる。十年が過ぎた後、ランスロットはついにパーシヴァルとエクターによって発見される。彼らはギネヴィアの命によりランスロットを探しに来ていたのである(散文『ランスロット』は、彼らと他の騎士たちがランスロットを探す旅で経験した様々な冒険を物語っている)。 | |||
キャメロットの宮廷に戻ったランスロットは、聖杯探求の偉業に参加する。この探求は、ランスロットの疎遠な息子であった十代の若きガラハッドによって始められた。彼はキャメロットへ劇的に登場し、到着時に決闘で父を打ち負かすなど、最も完璧な騎士であることを証明する数々の行為を成し遂げていた。さらなる冒険を経て、敗北と屈辱を味わったランスロット自身は、姦通者であり、騎士としての武勇によって得た世俗の名誉に心を奪われ、神への信仰から遠ざかっていたため、聖杯をわずかに垣間見るだけに留まってしまった。代わりに、霊的に清らかな息子こそが、ついに聖杯を手中に収めるのである。ガラハドの童貞である仲間たち、ランスロットの従弟である若きボースとペリノーレの息子パーシヴァルは、その後ガラハドが天へと昇天する姿を目撃するジョージ・ブラウンが指摘するように、「ガラハドはソロモンからアリマタヤのヨセフを経て類型的に継承される存在である一方、ランスロットは罪を犯した戦士であるダビデに相当する」のである<ref>https://web.stanford.edu/class/engl165b/sangral.htm, Malory's Sangrail, web.stanford.edu</ref>。 | |||
=== アーサーとの対立 === | |||
結局のところ、ランスロットとグィネヴィアの不倫は破滅的であり、それは『ランスロット』では美化され正当化されていたが、『クエステ』の時代には非難されるようになる<ref>ドーヴァー『ランスロット・聖杯物語解説』 p.119.</ref>。聖杯探求に失敗した後、ランスロットは貞淑な生活を送ろうとするが、これに怒ったグィネヴィアは彼を追い出す。しかし二人はすぐに和解し、エレインとガラハッドが登場する前の関係に戻る。マレアガントがグィネヴィアの不貞を証明しようと試みた際、彼は決闘裁判でランスロットに殺される。また、マロリーの版に収録された別のエピソードでは、ランスロットは毒殺の嫌疑から女王を救うため、マドール・ド・ラ・ポルトとの決闘にチャンピオンとして臨み、間一髪で帰還を果たす。散文版『ランスロット』全体を通じて、ランスロットは計5回の決闘を戦う<ref>King, David S., 2016, Victories foretelling disgrace: Judicial duels in the prose ''Lancelot'', South Atlantic Review, volume81, issue2, p55-71, jstor:soutatlarevi.81.2.55}}</ref>。 | |||
しかし、モルガンによってランスロットとグィネヴィアの真実がアーサーに明かされた後、処刑台で焼かれる運命にあった女王をランスロットが家族と従者と共に強引に救出に現れた際、ガウェインの三人の兄弟(アグラヴェイン、ガヘリス、ガレス)が命を落としてしまった。救出劇の最中、暴れ狂うランスロットとその仲間たちは、処刑を見張るためにアーサーが派遣した兵士たちを虐殺した。その中には、不本意で無防備な者たちも含まれていた(ランスロットの親友であるガレスもその一人だった。ランスロットは盲目の怒りに駆られてガレスの首を打ち砕いた)。マロリー本では、アグラヴェインはランスロットがキャメロットから血みどろの脱出を果たす過程で先に殺害される。また、アグラヴェインとモルドレッドがランスロットをギネヴィアの寝室で待ち伏せした際、スコットランドの騎士数名と共に同行したガウェインの息子たち(アーサー王の甥)であるフロレントとローヴルも同様に殺害された。『ウルガタ版モルト・アルトゥ』では、ランスロットが空けた円卓の席は、エリアンスという名のアイルランド人騎士に与えられた。 | |||
アーサー王の忠実な騎士や、王自身の親族を含む者たちを殺害したことが、モルドレッドによる反逆とアーサー王の失踪および表向きは死に至る一連の出来事を引き起こす。アーサー王とランスロットの間で起きた内戦は、ウルガタ版『モルト・アルトゥ』で初めて登場し、年代記伝承におけるアーサー王治世末期に起きた大ローマ戦争に取って代わった。最初に起こるのは、アーサーと復讐に燃えるガウェインがランスロット派に対して仕掛けた一連の戦闘である。彼らはジョイアス・ガードでランスロットを二ヶ月間包囲した後、軍を率いてガリア(マロリー版ではフランス)へと追撃した。 | |||
この結末として、アーサー王の庶子(かつてランスロットの若き従者であった)モルドレッドが王を裏切り、自ら王位を奪うためアーサーの死を偽って告げる。一方、ガウェインはランスロットに二度決闘を挑むが、毎朝ガウェインが正午までに力を増すという魔法がかけられていたため、ランスロットは決闘を遅らせていた。その後ランスロットはガラハッドの剣でガウェインを斬り伏せるが、命は助ける(ウルガタ版では、ヘクターに「とどめを刺せ」と促されている<ref>https://books.google.com/books?id=ojpHBAAAQBAJ&pg=PT17, The Passing of Arthur: New Essays in Arthurian Tradition, isbn:9781317656913, Baswell Christopher, Sharpe William, 2014, Routledge</ref>。)。しかしガウェインの頭部の傷は、後にブリテン島でモルドレッドとの戦いの最中に再び裂け、致命傷となる。瀕死のガウェインから「赦し」を請い、モルドレッドとの戦いを支援してほしいと記した切迫した手紙を受け取ったランスロットは、軍を率いて急いでブリテンへ戻った。しかし到着すると、ソールズベリー平原(カムランの戦いのロマンス版)でアーサー王が戦死したとの知らせを聞くこととなった。 | |||
=== 晩年と死 === | |||
ランスロットの死には主に二パターンがあり、いずれも彼は最後の年を社会から隔絶された隠遁修道士として過ごすことにとなっている。『モルト・アルトゥ』のパターンにおける原典では、王の死を悼んだ後、ランスロットは社会を離れる。ただし、後にモルドレッドの幼い息子たちとそのブリトン人支持者、サクソン人同盟者に対する勝利の戦争に参加し、例外的に物語における自身の過去の役割に対する部分的な贖罪を行っている<ref>Dover, ''A Companion to the Lancelot-Grail Cycle'', pp. 121?122.</ref>。 | |||
この出来事はグィネヴィアの死の直後に起こり、ウィンチェスターの戦いで森を駆け抜けて追跡した末にランスロットが自らモルドレッドの息子の一人を殺害するが、彼自身は突然行方不明となる。ランスロットは4年後、ヘクター、ブレオベリス、そして元カンタベリー大司教のみに看取られ病死する。彼は王と王妃の傍らに葬られることを望んでいたが、以前からジョイアス・ガードでガレホートの隣に埋葬されるという誓いを立てており、その誓いを守るため同地への埋葬を願い出た。『後世版』では、ランスロットとガレホートの埋葬地と遺体は、後にマーク王がアーサーの旧王国を荒らす際に破壊される。 | |||
『アーサー王の死』に含まれているバージョンでは、モルドレッドの息子たちとの戦争はない<ref name="Pyle 1993 238"/>。その中で、グィネヴィアは円卓の騎士たちの破滅は彼女の不倫が原因で、それが後の悲劇の種となったと考え、修道女になる。グィネヴィアはランスロットの最後のキスを拒み、彼に自分の土地に戻るように、二度と彼女の顔を見ることはないから、と述べた。これを聞いたランスロットは、もし彼女が悔い改めの生活を送るのであれば、自分もそうすると宣言する<ref>Umland Samuel J., 1996, The Use of Arthurian Legend in Hollywood Film: From Connecticut Yankees to Fisher Kings, Praeger, isbn:978-0-313-29798-4, p91, https://books.google.com/books?id=LE5mGSVCd7wC&pg=PA91}}</ref>。ランスロットは贖罪を求めて隠遁生活に入り、彼の親族の8人も修道生活に加わる。その中にはヘクターも含まれていた。修道士となったランスロットは後に死にゆくグィネヴィア(彼女は修道院長になっていた)のために臨終の儀式を行った。夢のお告げで、ランスロットはグィネヴィアが死にかけていることを知り、彼女を訪ねるために出発したが、グィネヴィアはランスロットが到着する前に死んでしまうことを願い、そのようになった。グィネヴィアが言ったように、ランスロットは生きている間、彼女の顔を見ることはなかった。女王の死後、ランスロットと彼の仲間たちは彼女の遺体をアーサー王の隣に埋葬するために運ぶ。その後、絶望したランスロットの健康は衰え始め(『アーサー王の死』によれば、この時点でもすでに断食と祈りのために身長が1キュビト縮んでいたと記されている)、彼は女王の死から6週間後にこの世を去る。彼の8人の仲間たちはフランスに戻り、土地の管理を行った後、ランスロットの臨終の願いに従い、聖地への十字軍遠征に出発し、そこでサラセン人(マロリー版では「トルコ人」)と戦って命を落とす。『イサイ・ル・トリステ』という14世紀のロマンスでは、隠者がランスロットの掘り起こされた骨の腕を使って、匿名のトリスタンの息子を「世界で最も優れた騎士の手によって」騎士に任命する<ref>https://books.google.com/books?id=WdvYaKETyykC&pg=PA13, Ysaie le triste: traduction, Andre Giacchetti, 26 April 1993, Presses universitaires de Rouen et du Havre, isbn:978-2-87775-888-8</ref>。 | |||
== 参考文献 == | |||
* Wikipedia:[https://en.wikipedia.org/wiki/Lancelot Lancelot](最終閲覧日:26-01-22) | |||
** Bruce Christopher W., 1998, The Arthurian Name Dictionary, Routledge, isbn:978-0-8153-2865-0, https://books.google.com/books?id=XZFbczeMtYcC | |||
** Dover Carol, A Companion to the Lancelot-Grail Cycle, 2003, D.S. Brewer, isbn:978-0-85991-783-4, [https://archive.org/details/companiontolance0000unse/page/119 119], https://archive.org/details/companiontolance0000unse/page/119 | |||
** Elspeth Kennedy, Lancelot of the Lake, Introduction, Corley, Corin, Oxford World's Classics, Oxford University Press | |||
== 外部リンク == | |||
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* [https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.87039/ An English translation of the Prose ''Lancelot''] at the [[Internet Archive]] | * [https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.87039/ An English translation of the Prose ''Lancelot''] at the [[Internet Archive]] | ||
* [http://expositions.bnf.fr/arthur/livres/lancelot/index.htm Lancelot digital exposition] at the [[Bibliothèque nationale de France]] {{in lang|fr}} | * [http://expositions.bnf.fr/arthur/livres/lancelot/index.htm Lancelot digital exposition] at the [[Bibliothèque nationale de France]] {{in lang|fr}} | ||
== 参照 == | |||
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2026年1月22日 (木) 18:46時点における最新版
ランスロット・デュ・ラック(Lancelot du Lac)(フランス語で『湖の騎士ランスロット(Lancelot of the Lake)』の意)、別表記として『ラウンスロット(Launcelot)』などがある[1]は、アーサー王伝説の騎士道物語伝統における人気キャラクターである。彼は通常、アーサー王の親しい仲間であり、円卓の騎士の中でも最も偉大な一人として描かれる。また、アーサーの妻であるグィネヴィアの秘密の恋人でもある。
最も有名かつまとまった物語では、美しいランスロットは滅びたベノイック王国のバン王の息子で孤児だった。彼は妖精の領域で湖の貴婦人に育てられ、若き騎士としてアーサー王の宮廷に加わるまで実の親を知らず、そこで自らの出自を知った。ランスロットは数々の戦い、冒険、馬上槍試合の英雄であり、ほぼ比類なき剣士かつ馬上槍試合の達人として名高くなった。彼はやがて「ジョイアス・ガード城」の領主となり、彼が絶対的な忠誠を捧げるグィネヴィア王妃の専属侍従騎士となった。また騎士ガレホート(Galehaut)と親友となったが、その一方、頻繁に、時には長期間にわたる激しい怒りの発作やその他の狂気の症状に苦しんだ。コーベニックのエレインが魔法でランスロットを誘惑した後、二人の間に生まれた息子ガラハッドは父の性格上の欠点を持たず、完璧な騎士として成長した。ランスロット自身が罪ある身のために失敗した最大の探求、すなわち聖杯の獲得にガラハッドは成功した。やがてランスロットとグィネヴィアの不倫関係が公に発覚すると、それは血みどろの内戦へと発展し、モルドレッドに利用された結果、アーサー王の王国は終焉を迎える。
ランスロットが主人公として初めて確認できるのは、クリスティアン・ド・トロワの12世紀フランス詩『ランスロット、馬車の騎士』である。この作品では既にグィネヴィアへの宮廷的愛が中心テーマとなっていた。しかし、別の初期のランスロット詩『ランゼレット』(作者不詳のフランス語書をドイツ語に翻訳した作品)にはそのようなモチーフは登場せず、両テキストの関連性や共通の出典があるかどうかは不明である。その後、ランスロットの性格と物語は、クリスティアンの物語を基にアーサー王物語の他の作品で展開され、特に『ランスロット・グレイル』という膨大な散文物語連作において、現在広く知られる伝説の形態となった。この物語は『アーサー王の死』における要約版を経て伝承された。忠誠と裏切りを併せ持つランスロットは、何世紀にもわたり人気を保ち続け、現代の作家たちによって頻繁に再解釈されている。
歴史
[編集]名前と起源
[編集]ランスロットがアーサー王伝説の登場人物となった起源については、多くの説が提唱されてきた。フェルディナン・ロットとロジャー・シャーマン・ルーミスが提唱した説では、ランスロットの人物像は、初期のアーサー王のウェールズの物語『カルフフとオルウェン(Culhwch and Olwen)』(ランスロットを「ガニオン岬」と結びつける)に登場するアイルランド人レンレウク(Llenlleog)(レンレウク(Llenlleawc))や、ウェールズの英雄ルフ・ラウインナウク(Llwch Llawwynnauc)(おそらくユーヘメリズム化されたアイルランドの神ルー・ロンベムネック(Lug[h] Lonbemnech)の変形で、「ルー(Llwch)」はウェールズ語で「湖(Lake)」を意味する)に関連するとされている。おそらく、現在では忘れ去られた「ラムカラド(Lamhcalad)」のような別名があったのだろう[2] 。ルフとランスロットは名前に加え、剣を振るったり、クルフフ(Culhwch)、プレイドゥ・アンヌン(Preiddeu Annwn)で大釜を巡って戦う点など、類似点が多く、同一人物であることが示唆される。ルーミスはランスロットをウェールズ神話の英雄リュー・ラウ・ギフェス(Lleu Llaw Gyffes)と関連付け、T. グウィン・ジョーンズはランスロットとウェールズ伝説におけるアーサー王の甥エリウロド(Eliwlod)(エリウラッド(Eliwlad))との関連性を主張した[3]。アーサー王伝説のスキタイ起源説を支持する研究者らは、その初期形態が「アランヌス・ア・ロット(Alanus-à-Lot)」、すなわち「アラン人のロット川」であった可能性を推測している。[4] 古代に手がかりを求める人々は、ギリシア神話の人物であるアスカロス(Askalos)とモプソス(Mopsus)(モクサス(Moxus))にランスロットの要素を見出している[5][6]。
アルフレッド・アンスカムは1913年、名前「ランスロット」がゲルマン語の『*Wlancloth』に由来し、その語源は古英語の『wlenceo』(誇り)と『loða』(マント)にあると提唱した[7]。これは6世紀の『ゲティカ』に言及されるゴート族の首長または部族名であるヴィノヴィロースとの関連で提唱されたものである [8]。ノルマ・ロア・グッドリッチら近年の研究者によれば、この名称は12世紀のフランス人詩人クリスティアン・ド・トロワの創作である可能性もあるが、そうでない場合、ジェフリー・オブ・モンマスの登場人物アンギュセラウスに由来する可能性がある。アンギュセラウスという名はおそらく、6世紀のピクト人王フォルグスの息子のラテン語化名であるウンギスト(Unguist)に由来し、ジェフリー・オブ・モンマスの原文であるラテン語から古フランス語へ翻訳すると「アンセルス」となる[9] 。現代においてランスロットの原型候補として提案されている他の人物は、6世紀に存在した初期のフランスの聖人、フランボー・ド・ラッセ(Saint Fraimbault de Lassay)[10]がいる。彼はグウィネズ王マエルグン[11]およびラエノグ(Llaenauc)、エルメットの王グワログの父である[12]。
ランスロットは、もともと独立した民話の人気主人公であったが、最終的にはアーサー王伝説に吸収された可能性がある。水の精霊による子供の誘拐、3日連続で 3種類の変装をして馬上試合に登場する英雄、そして異世界(ケルトの異世界)の牢獄から女王や王女を救出する、といった要素は、広く知られた物語の特徴であり、そのバリエーションは、テオドール・エルサール・ド・ラ・ヴィルマルクの『ブルターニュのバラード(Barzaz Breiz)』、エマニュエル・コスキャンの『ロラン物語(Contes Lorrains)』、ジョン・フランシス・キャンベルの『西ハイランド物語(Tales of the West Highlands)』で多くの例がみられる[13]。名前については、 「ランスロット」は、フランス語の名前「ランセラン(Lancelin)」の変形である可能性が指摘されている。この言葉は、古フランス語で「槍(javelin)」を意味していたと思われる[14]。この説は1881年にガストン・パリが提唱し、後にレイチェル・ブロムウィッチも支持した。[15]また、古フランス語の「L'Ancelot」(「従者」を意味する)に由来する可能性もある(この仮説は1842年にド・ラ・ヴィルマルクが初めて提唱した)。実際、いくつかの写本ではランスロットの名前はこのように表記されている。[9]さらに、ランスロットの名は「誇り高き者」を意味する珍しいサクソン名Wlancを連想させる[16]。
スティーブン・パウは最近、「ランスロット」という名が、歴史上のハンガリー王ラディスラウス1世から発生したハンガリー語「ラースロー(Laszlo)」(ラディスラウス)の古フランス語発音に由来すると主張している。1180年代初頭、ハンガリー王ベラ3世はラディスラスの聖人列聖(1192年承認)と、フランス王女マルグリット(1186年に娶った)を通してフランスとの婚姻同盟を推進していた。マルグリットはクリスティアンのパトロンであるシャンパーニュのマリーの異母妹であり、ランスロットの創作は、フランス王家の成員との結婚時期に合わせ、ハンガリー王を称える意図があったと考えられる。[17]
クリスティアンとウルリッヒ
[編集]ランスロットを登場人物として扱う最古の既知作品であるクレティエン・ド・トロワの古フランス語詩『エレックとエニード』(1170年)において、ランスロットの名は、アーサー王の宮廷に侍る騎士たちの名簿において三番目に記されている。その名がガウェインとエレックに続く事実は、クリスティアンの物語では目立った役割を果たさなかったにもかかわらず、宮廷におけるランスロットの重要性が想定されていたことを示している。ランスロットはクレティアンの『クリジェス』にも登場し、クリジェスが冒険の途中で打ち倒さねばならない騎士の一人として重要な役割を担っている。[2]
クリスティアンの『荷車の騎士ランスロット(Le Chevalier de la charrette)』において初めて、彼は主人公となり、正式な名前「ランスロット・デュ・ラック(湖のランスロット)」を与えられる[18]」。この名は後に『ランスロット・グレイル』のフランス人作者たち、そしてトマス・マロリーによって採用された[19]。 クレティエンは読者がランスロットの背景をよく知っているかのように扱うが、今日ランスロットに一般的に結びつけられる特徴や武勇伝の大半はここで初めて言及された。物語は、ランスロットがアーサー王の妻グィネヴィア王妃に狂おしい恋心を抱き、彼女をメリアガント王子(同じく彼女に片思いしていたが全く報われなかった)に誘拐された後、危険な異界の地ゴレから救い出すまでのを描く。
マティルダ・ブルックナーの言葉を借りれば、「クリスティアン以前のものは不確かだが、彼の版が、並外れた武勇がアーサー王の王妃への愛と不可分である騎士ランスロットの、その後のすべての物語の出発点となったことは疑いない」[20]。フランス国立図書館のダニエル・ケレルによれば、「クリスティアンが描いたランスロットという人物は、愛する女性への想いを高揚と恍惚の極限まで押し進める宮廷愛の理想像である……愛に支配されたランスロットは、もはや周囲の世界を見失い、自らの存在すら認識できなくなっている。」ということになる。
愛に麻痺し、愛する女性を想ううちに全ての能力を失ってしまう叙情的な激しい愛の持ち主として、クリティエンはランスロットを女王への情熱に完全に囚われた騎士とした。欲望に圧倒され、彼は繰り返し周囲の現実を忘却する。[...]騎士は、キリストが神の殉教者であるように、貴婦人が愛の殉教者となる傷を負うことも厭わない。ここで貴婦人は騎士が崇拝する偶像となる。ランスロットは、祭壇の前に立つように女王が待つ寝床の前に跪き、彼女を聖遺物のように崇拝し続け、そこに全幅の信頼を置く。ランスロットとグィネヴィアの愛の夜は、五感の饗宴として、また他のいかなる恋人たちも知らぬ、より大きく深い、言葉に尽くせぬ歓喜として描かれる。しかし夜明けと共に訪れる別れは、絶望のうちに去る騎士の苦しみを再び呼び覚ます。「体は去れど、心は残る」である。[21]
ランスロットのグィネヴィアへの愛は、12世紀末(1194年以降)にウルリッヒ・フォン・ツァツィコーヴェンが中世高地ドイツ語で書いた叙事詩『ランセレット(Lanzelet』というクリスティアンとは別の初期作品には全く登場しない。ウルリッヒは自身の詩が「フランス語の書物」から得た先行作品の翻訳であると主張し、「フランス語の書物が語る内容と比べて、何も省略も追加もしていない」と読者に断言している。彼は出典をアルノー・ダニエルという人物がプロヴァンス方言で書いたものと説明しており、クリスティアンの物語とはいくつかの点で大きく異なっていたと思われる。『ランセレット』において、ジノヴェール(グィネヴィア)を誘拐したのはヴァレラン王と名付けられており、その名がウェールズのメリアガントに由来するクレティアンのメリアガントとは異なる。さらに、ジノヴェールを救うのはランセロットではなく、ランセロットは妖精の王女イブリスと結婚して幸せになる。この書物のランセレットはアーサー王の甥、アーサーの姉クラリーヌ王妃の息子で、父であるジュヌウィスの王パンは反乱で命を落とした。クリスティアン版と同様、ランセレットも妖精に育てられる。養母は乙女の国の水の女王として詳細に描かれ、彼の初期の冒険の多くの原因となっている[22]。
両物語に共通する要素から、ランスロットの伝説が「由来不明」なロマンスとして始まったことが分かる[23]。ランスロットは、もともとアーサー、グィネヴィア、ランスロットの三角関係とは無関係な物語の主人公であり、おそらくウルリッヒのバージョンとよく似た話だったのではないかという説がある[24]。これが事実であれば、不倫というモチーフは、クレティエンが『荷車の騎士』のために創作したものか、あるいは、宮廷愛に関する事柄に強い関心があることで知られた、彼のパトロンであるマリー・ド・シャンパーニュという女性が彼に提供した(現在は失われた)情報源に存在していたかのどちらかと考えられる[23][25]。クレティエン自身は理由は不明だが、詩の完成を放棄した。おそらく主題に対して個人的な嫌悪感があったのだろう。その後、クレティエンはこの詩を同僚のゴドフロワ・ド・レニに譲り、ゴドフロワが完成させた。[26]
伝説の変遷
[編集]ランスロットのキャラクターは、13世紀初頭に書かれた古フランス語の散文ロマンス『ヴルガート・サイクル』(別名『ランスロット=グレイル』)においてさらに発展した。そこでランスロットは、物語の後編といえる『散文ランスロット(Lancelot en prose)』、『聖杯の探求(Queste del Saint Graal)』、『アーサー王の死(Mort Artu)』において重要な役割を果たす。クリスティアン・ド・トロワがマリー伯爵夫人の依頼で執筆した際、伯爵夫人が関心を持ったのはランスロットと女王の恋愛関係のみだった。しかし『散文ランスロット』では物語が大きく拡張され、彼には家系(失われた王国からの血筋という『ランスレット』と似た設定)が与えられ、さらに他の多くの冒険が描かれた。ガストン・パリスは、『散文ランスロット』におけるグィネヴィアとメレアガントのエピソードは、クリスティアンの詩をほぼ文字通り翻案したものであり、その宮廷愛のテーマはマリーによって不本意なクリスティアンに求められたものだと主張した[27] 。ただし、これは物語の大幅な拡張と見なすこともできる。『散文ランスロット』の物語の大部分は、後に『後期ヴァルガート・サイクル』として知られる改訂版で削除され、ランスロットはもはや中心人物ではなくなった。現存する部分は再構成され、このサイクルの他の部分に組み込まれている。
ランスロットは、アーサー王物語というジャンルにおけるキリスト教的なテーマと結びつけられることが多い。『荷車の騎士ランスロット』においてランスロットがグィネヴィアを求める姿は、キリストが人間の魂を求める探求に似ている[28] 。墓地での冒険は、キリストの「地獄の征服」と「復活」を連想させる表現で描かれている。彼は難なく墓地の石棺の蓋を開け、そこに刻まれた碑文には彼が捕らわれ人を解放することが予言されていた[29]。 ランスロットは後に聖杯探求にまつわる主要な騎士の一人となるが、クリスティアンは未完の最終作『パーシヴァル、聖杯物語』においてランスロットを全く登場させていない。『パーシヴァル、聖杯物語』は中世文学に聖杯のモチーフを導入したものである。パーシヴァルはクレティアンの物語において聖杯を求める唯一の者である。ランスロットが聖杯探求に関与するとされた最初の描写は、1200年から1210年の間に書かれた散文ロマンス『ペルレスヴォー』においてである[30]。ロベール・ド・ボロンに触発されたヴルガート・サイクルの伝承は、ランスロットに聖書に基づく系譜を与え、その古代の祖先の中にダビデ王とソロモン王を挙げている[31]。しかし同時に、彼の罪ゆえに聖杯探求に失敗する運命にあるとも描いている。
ドイツのロマンス『王冠(Diu Crone)』ではランスロットに太陽神のような英雄的側面を与られえ、その力が真昼にピークに達するという特徴が付加されている。これは通常ガウェインに関連付けられる特性である[32]。中世オランダ語で書かれたいわゆる『ランスロット集成』(約1320年)には、ランスロットの新作を含む7つのアーサー王物語が収録されており、それらは三部構成の物語サイクルに組み込まれている。
オランダにおけるこの新たなランスロット物語の構築は、ランスロット=聖杯物語サイクル、とは独立したもので、ランスロットが広く人気を博していたことを示している[33]。この『ランスロットと白い足を持つ鹿』(「Lanceloet en het Hert met de Witte Voet」)において、彼は七頭の獅子と戦い、鹿の白い足を得る。この足があれば彼は王女と結婚できるのだ[34]。15世紀末、マロリーの『アーサー王の死(Le Morte d'Arthur)』はランスロットと聖杯の物語において、ランスロットを最高の騎士として描いた。これは、ガウェインが最も顕著な存在であった先行する英国の物語の伝統からの逸脱していた[35]。
ランスロットとグィネヴィアの禁断の恋は、トリスタンとイゾルデの恋と並立する、と捉えることができ、ランスロットは最終的に、クレティアンの物語を継承する後世の作品において円卓の騎士団の没落の原因となり、偶然と人間の弱さから起きた悲劇の象徴として位置づけられた[36]。 『パーセフォレスト(Perceforest)』では、古代の騎士リヨネルと妖精の女王ブランシェットの娘である姉妹たちが、実はランスロットとグィネヴィア、そしてトリスタンの両方の祖先とされている[37]。
一般的な伝承
[編集]誕生と幼少期
[編集]『ヴァルガート・サイクル』に語られるランスロットの背景では、ランスロットは「ガリアとブルターニュの境界地帯」で、『ガラハド(Galahad)』(原形は『Galaad』または『Galaaz』と表記され、同名の息子ガラハッド(Galahad)とは区別される)として、ガロ・ローマ文化圏の支配者バン王(ベノイック(Benoic)、英語名ベンウィック(Benwick)、アンジュー東部の国)の子として生まれた。バンの王国は敵であるクラウダス王に攻め滅ぼされた直後で、致命傷を負った王とエレイン王妃は、最後の砦トレベ(トレベス、おそらく現在のシェヌット=トレヴ=キュノーにある歴史的に実在したトレヴ城を指すのだろう)の陥落から、幼子を抱えて逃れた。エレインが瀕死の夫の世話をしている間、ランスロットは湖の貴婦人として知られる妖女に連れ去られる。生き残ったエレインは後に修道女となる。イタリアの『円卓の物語』で語られる別のバージョンでは、亡きバンの妻ゴスタンツァが予定より2ヶ月早くランスロットを出産し、間もなく彼女も死亡したという。
その後、貴婦人は魔界で赤ん坊を育てた。三年後[38]人間界で過ごすよりも、幼いランスロットははるかに早く成長し成熟する。この育ち方から、彼は「デュ・ラック(湖の)」という称号を得る。彼の従兄弟であるライオネルと若きボースは、ガリアのボース王とエレインの妹エヴァインの子であり、まずクラウダスの騎士に連れ去られ、後に湖の乙女のもとへ密かに連れて行かれ、ランスロットの従者となる[39]。ランスロットの他の著名な生存親族には、ブローベリス・ド・ガニスやヘクター・ド・マリスなどが挙げられ、通常はより遠縁の者たちである。彼らの多くは円卓の騎士に加わる。前述の者たち全員、白きエリアンらその息子たち、そしてランスロット自身の息子も同様である。散文体『ランスロット』では、ランスロットと何らかの形で親族関係にあるとされる、より軽微な円卓の騎士として以下の人物も言及されている:アバン、敏捷なるアカタン、バニン、ブラモール、 ブランディノール、黒きクリニデス、勇者ダヌブレ、ガドラン、名高いヘベス、レラス、黒きオクルスス、ピンカドス、タンリなど[40](マロリーでは異なる人物が少々登場する)。
ウルガタ版『ランスロット』の冒頭部では、彼を(ノリス・J.・レイシーの訳により)「この国で最も美しい若者」たらしめた特徴が詳細に描写されている。その手と首の女性的な美しさ、そして程よい筋肉の付き具合が特に強調されている。ランスロットの人物像について、物語はさらに、クリスティアン版で既に顕著だった精神的不安定さに加え、狂戦士的な戦闘熱狂に陥りやすい性質を付加している(クリスティアン版では、ランスロットは特にグィネヴィア救出の使命に執着し、危険を顧みず飛び込み、傷や痛みを無視する様子が特徴的である)。
機嫌が良い時は、彼の目は輝き、笑い、喜びに満ちていた。しかし怒ると、その目は燃えさかる炭のように見え、頬骨から赤い血の滴がにじみ出ているようだった。ランスロットは怒れる馬のように鼻を鳴らし、歯を食いしばってぎしぎしと鳴らし、その口から吐き出される息は全て赤く染まっているように見えた。そして彼は戦場のラッパのように叫び声をあげ、歯で噛みしめているものや手で握りしめているものは何でも引き裂いてしまった。すなわち、彼が激怒している時は他の何ものにも気づかず、このようなことは幾度となく起こった。[38]
アーサー王の宮廷
[編集]ランスロットの初期の冒険(マロリーにも収録[41])は「美しき知られざる者(Fair Unknown)」のタイプに属する。[42]これらは、クリスティアンの物語を発展させ、彼のアイデンティティ探求とグィネヴィアへの愛を絡み合わせている[43]。ランスロットは初め名もなき白き騎士(Chevalier Blanc)とし登場し、銀の鎧を身にまとい白馬に乗っていた[44] 若いランスロット(18歳と主張しているが、後に実際には15歳であることが明らかになる[45])は、湖の貴婦人の導きによりアーサー王の王国ログレスに到着し、彼女の要請で王から騎士に叙任される。湖の貴婦人は、あらゆる魔法を解く強力な魔法の指輪をランスロットに授ける(クリスティアン版では、彼の匿名の妖精の養母も同様の行為を行う; 後世の『ランスロット』では、これをグィネヴィアから授かったものと後付けで設定している[46])。
ランスロットは、アーサー王の甥であるガウェインを悲嘆の塔のエピソードで捕囚から解放した後、ついにアーサー王の精鋭集団である円卓の騎士の一員となることを承諾する[47]。彼はその後、アーサー王の最も親密で信頼される友人の一人となり、最高の騎士となる。ランスロットはその立場から、ロージアン(スコットランド)におけるサクソン人との戦いで決定的な役割を果たす。この戦いで彼は、再びガウェインとアーサー王をサクソン岩城から救い出し、サクソン人の魔女姫カミーユを捕らえたのである。さらに彼は、半巨人ガレオーによるアーサー王国の征服を単身で阻止し、ガレオーを説得してアーサー王の陣営に加わるよう導いた。
頭韻法『モルト・アルチュール』の記述を更に拡張し、マロリーはランスロットをアーサー王のローマ戦争における主要指揮官の一人として描いた。最終決戦である皇帝ルキウスとの戦いでは、負傷したベディヴィアをランスロット自ら救出する場面がある[48]。『死の書』の大部分は年代順に構成されていないため、ローマのエピソードは実際にはマロリーの第2巻内で展開され、ランスロットの青年期を描く第3巻に先行している。
グィネヴィアと流浪の騎士
[編集]ランスロットが宮廷に到着するやいなや、彼と若き王妃グィネヴィアは奇妙な魔法の絆によって恋に落ちる。散文版ランスロット物語における彼の冒険の一つは、アーサー王の敵マレアガントによって誘拐されたグィネヴィアを救い出すことだった。出来事の正確な時期や順序は資料によって異なり、詳細に語られるのは特定の資料にのみ見られる。マレアガントのエピソードは、実際には(後世のより長い版本以前の)原初的な非循環形式の散文『ランスロット』の終結部を画するもので、英雄の幼少期と青年期のみを語っている[49]。散文版『ランスロット』では、彼はアーサー王ではなくグィネヴィアによって実際に騎士に叙任される[50]。
マロリーの『アーサー王の死』における要約版では、ランスロットの叙任は王によって行われ、メレアガントから女王を救出することと、ランスロットと王妃の関係が肉体的に成就することは、何年も先送りされる。マロリーが描写するところによれば、素手で牢獄の鉄格子を破った後、「ランスロット卿は王妃と寝床を共にし、傷口に痛みを感じることもなく、夜明けまで快楽と交わりを楽しんだ」という[51]。この不倫という背信行為は、マロリーの物語では後半、ランスロットが聖杯探求に失敗した後に起こる。とはいえ、マロリーが採用した「フランス語本」の出典と同様に、マロリーのランスロットも物語の早い段階でグィネヴィアに仕えることに身を捧げている。『ヴルガート・サイクル』におけるランスロットの初期の放浪騎士的冒険の数々(すべてではない)は、マロリーの編纂作品に取り入れられている。これらのエピソードは、アーサー王の騎士数名を捕虜にしていた強大な悪党タークインを倒すものから、二人の巨人騎士を討ち取るものまで多岐にわたる(ヴルガート版では、その後地元民がランスロットを領主と宣言し、彼に留まるよう説得しようとする[52])。彼はまた数々の馬上槍試合で勝利を収めており、その中にはマレアガントの父であるバグデマグス王に代わって戦った際のものも含まれる。
ランスロットは自らの活動を貴婦人グィネヴィアに捧げ、彼女の名のもとに騎士として行動する。ある時、グィネヴィアが自身の愛を疑っていると信じ込まされ、狂気に陥るが、湖の貴婦人によって発見され癒される[53]。ランスロットが一時的に正気を失う別の例は、カミーユに短期間囚われた際に生じたが、こちらも湖の乙女によって癒やされる。彼の繰り返される狂気の怒りの発作(特に「性的魅力のある女性の前で起きる」[54])や自殺傾向(通常はガウェインまたはガレホートの死に関する虚偽または真実の知らせに関連)は、ヴルガート版全体を通じて頻繁に現れ、他の版でも時折見られる。彼はまた、通常は騎士道精神によって自己抑制しているが、この抑制は行動を起こす際に容易に外れてしまい、ランスロットの中により暗く暴力的な側面を秘めている可能性を残している[55]。それにもかかわらず、ウルガタ版『ランスロット』は「世の中の騎士の中で、彼はいかなる貴婦人や乙女をも傷つけることを最も嫌った人物であった」と記されている[56]。
ある時、ランスロット(当時はまだ単に白の騎士として知られていた)はブリテン島で城を征服し、自らのものとする。その城はジョイアス・ガード(かつてのドロラス・ガード)として知られ、そこで彼は自らの本名と出自を知り、名高い祖先ランスロットの名を自らの名とする。アーサー王の助力により、ランスロットはクラウダス(ウルガータ版では同盟したローマ軍も)を打ち破り、父の王国を奪還する。しかし彼は再び、従兄弟のボースとライオネル、そして非嫡出の異母兄弟エクター・ド・マリス(エクター)と共にキャメロットに残ることを決意する。
グィネヴィアのライバルたちとガレホート
[編集]ランスロットは円卓の騎士の中でも最も有名な一人となり、マロリーの『ハンガリーのアーリー卿』のエピソードでは世界一の騎士と称されるほどであった。また、ヴァルガートの『ランスロット』の序盤で巨女のマルオーの女主人に捕らえられたことを皮切りに、多くの女性たちから求められることになった。邪悪な魔女ヘラウェスは彼を執拗に求め、マロリーの危険な礼拝堂のエピソードで生け捕りにも殺害にも失敗すると、彼女は間もなく悲しみで自ら命を絶った。同様に、アストラットのエレイン(『俗語版』では「エスカロットの乙女」、現代では「シャロットの乙女」として知られる)も、ランスロットへの片思いの悲しみから命を落とす。一方、ランスロットは公言された処女の乙女と互いに惹かれ合いながらもプラトニックな愛に落ちた。マロリーは彼女をアマブルと呼んでいる(ヴルガートの原典では無名)。
ランスロットは、黒騎士[57] (別の機会には赤騎士にも変装している)となって[57][58] 、強大な外国の侵略者、ガレホート王子(ガラハウト)との戦いで決定的な役割を果たす。ガレホートは勝利を目前にアーサーの王国を征服しようとしていたが、ランスロットの驚くべき戦場での活躍に感銘を受け、野営地で一夜を共にする特権と引き換えに彼に恩を与えることを申し出る。ランスロットはこれを受け入れ、恩を用いてガレホートにアーサーへの無条件降伏を要求する。ガレホートは自らランスロットの臣下を名乗り、王の同盟者となる。後にランスロットが円卓の騎士に加わった後、彼もまた円卓に加わるのである[47]。
ガレホートが持っているランスロットへの情熱の正確な性質は、現代の学者の間で議論の的となっており、親密な友情と解釈する者もいれば、ランスロットとグィネヴィアの間のような愛と解釈する者もいる[59]。ガレホートはランスロットを独占することに執着している。自ら進んでランスロットに公然と従属する一方で、グィネヴィアやアーサー王に対しては常に彼を独占しようとする行動を取り、ガウェインが「ガレホートはどの騎士が自分の貴婦人に対して抱く嫉妬よりも、ランスロットに対して強い嫉妬を抱いている」と評するほどである[47]。当初、ランスロットはガレホートの故郷ソレロワで彼と共に暮らす。ランスロットが「偽りのグィネヴィア」事件で魔法にかけられたアーサー王から彼女を救った後、グィネヴィアもそこに合流する[60]。その後、アーサーはガレホートを円卓の騎士に招く。ガレホートはまた、グィネヴィアにランスロットの愛情に応えてもよいと説得する人物でもある[47]。散文版『トリスタン』およびその派生作品(後期の『クエステ』における記述を含む)では、復讐に燃えるコーンウォールのマーク王から逃れる恋人たちトリスタンとイゾルデを、ランスロット自身が自らの城に匿う。
ランスロットはグィネヴィア王妃への忠誠を貫き、アーサー王の妹で魔術師であるモルガン・ル・フェイの執拗な求愛を拒む。モルガンはランスロットを常に誘惑しようとし、彼に対しては情欲的な愛と憎しみを等しく激しく抱いていた。モルガンはランスロットを繰り返し誘拐し、ある時はセビルを含む魔術の女王たちと共に集団で拉致したこともある。ある時(散文『ランスロット』に記される通り)、モルガンはガウェインを救うため一時的にランスロットを解放することを承諾するが、その条件としてランスロットは直ちに彼女のもとへ戻ることを要求する。さらに彼女は、ランスロットが一年間グィネヴィアやガレホートのどちらとも一切関わらないことを追加条件として彼を解放する。この条件によりランスロットは半狂乱に陥り、ガレホートは彼への渇望から病に倒れる。ガレホートはランスロットの自殺という偽りの噂を聞き、苦悩の末に命を落とす。
エレイン、ガラハッド、そして聖杯
[編集]コーベニックのエレイン姫は、フィッシャー・キングの娘であり、ランスロットに恋をするが、他の者たちよりも成功する。魔法の助けを借りて、エレイン姫はランスロットを騙し、自分がグィネヴィアであると信じ込ませ、こうして彼を欺瞞によって彼女と寝させた[61]。そうして妊娠した結果、息子ガラハッドが誕生するが、エレインは彼を父のいない環境で育てさせる。ガラハッドは後に、マーリンが予言した「聖杯を見つける偉業を成し遂げる運命にある善き騎士」として現れる。しかしグィネヴィアは二人の関係を知り、エレインが魔法の策略でランスロットと二度も関係した上、それがグィネヴィア自身の城で起こったと知ると激怒する。彼女はランスロットを責め、キャメロットから追放する。彼女の反応に打ちのめされたランスロットは再び狂気に陥る。ランスロットは逃亡し姿を消し、(二年か五年)荒野をさまよう。この間、後悔に苛まれたグィネヴィアや他の者たちが彼を探し求める。やがて彼はコルベニックに戻り、そこでエレインに正体を見破られる。聖杯をヴェール越しに見せられたランスロットは狂気を癒され、その後エレインと共に人里離れた島で暮らすことを選ぶ。彼はそこで「邪悪な騎士(Chevalier Malfait、マロリーも用いたフランス語形)」の偽名で知られるようになる。十年が過ぎた後、ランスロットはついにパーシヴァルとエクターによって発見される。彼らはギネヴィアの命によりランスロットを探しに来ていたのである(散文『ランスロット』は、彼らと他の騎士たちがランスロットを探す旅で経験した様々な冒険を物語っている)。
キャメロットの宮廷に戻ったランスロットは、聖杯探求の偉業に参加する。この探求は、ランスロットの疎遠な息子であった十代の若きガラハッドによって始められた。彼はキャメロットへ劇的に登場し、到着時に決闘で父を打ち負かすなど、最も完璧な騎士であることを証明する数々の行為を成し遂げていた。さらなる冒険を経て、敗北と屈辱を味わったランスロット自身は、姦通者であり、騎士としての武勇によって得た世俗の名誉に心を奪われ、神への信仰から遠ざかっていたため、聖杯をわずかに垣間見るだけに留まってしまった。代わりに、霊的に清らかな息子こそが、ついに聖杯を手中に収めるのである。ガラハドの童貞である仲間たち、ランスロットの従弟である若きボースとペリノーレの息子パーシヴァルは、その後ガラハドが天へと昇天する姿を目撃するジョージ・ブラウンが指摘するように、「ガラハドはソロモンからアリマタヤのヨセフを経て類型的に継承される存在である一方、ランスロットは罪を犯した戦士であるダビデに相当する」のである[62]。
アーサーとの対立
[編集]結局のところ、ランスロットとグィネヴィアの不倫は破滅的であり、それは『ランスロット』では美化され正当化されていたが、『クエステ』の時代には非難されるようになる[63]。聖杯探求に失敗した後、ランスロットは貞淑な生活を送ろうとするが、これに怒ったグィネヴィアは彼を追い出す。しかし二人はすぐに和解し、エレインとガラハッドが登場する前の関係に戻る。マレアガントがグィネヴィアの不貞を証明しようと試みた際、彼は決闘裁判でランスロットに殺される。また、マロリーの版に収録された別のエピソードでは、ランスロットは毒殺の嫌疑から女王を救うため、マドール・ド・ラ・ポルトとの決闘にチャンピオンとして臨み、間一髪で帰還を果たす。散文版『ランスロット』全体を通じて、ランスロットは計5回の決闘を戦う[64]。
しかし、モルガンによってランスロットとグィネヴィアの真実がアーサーに明かされた後、処刑台で焼かれる運命にあった女王をランスロットが家族と従者と共に強引に救出に現れた際、ガウェインの三人の兄弟(アグラヴェイン、ガヘリス、ガレス)が命を落としてしまった。救出劇の最中、暴れ狂うランスロットとその仲間たちは、処刑を見張るためにアーサーが派遣した兵士たちを虐殺した。その中には、不本意で無防備な者たちも含まれていた(ランスロットの親友であるガレスもその一人だった。ランスロットは盲目の怒りに駆られてガレスの首を打ち砕いた)。マロリー本では、アグラヴェインはランスロットがキャメロットから血みどろの脱出を果たす過程で先に殺害される。また、アグラヴェインとモルドレッドがランスロットをギネヴィアの寝室で待ち伏せした際、スコットランドの騎士数名と共に同行したガウェインの息子たち(アーサー王の甥)であるフロレントとローヴルも同様に殺害された。『ウルガタ版モルト・アルトゥ』では、ランスロットが空けた円卓の席は、エリアンスという名のアイルランド人騎士に与えられた。
アーサー王の忠実な騎士や、王自身の親族を含む者たちを殺害したことが、モルドレッドによる反逆とアーサー王の失踪および表向きは死に至る一連の出来事を引き起こす。アーサー王とランスロットの間で起きた内戦は、ウルガタ版『モルト・アルトゥ』で初めて登場し、年代記伝承におけるアーサー王治世末期に起きた大ローマ戦争に取って代わった。最初に起こるのは、アーサーと復讐に燃えるガウェインがランスロット派に対して仕掛けた一連の戦闘である。彼らはジョイアス・ガードでランスロットを二ヶ月間包囲した後、軍を率いてガリア(マロリー版ではフランス)へと追撃した。
この結末として、アーサー王の庶子(かつてランスロットの若き従者であった)モルドレッドが王を裏切り、自ら王位を奪うためアーサーの死を偽って告げる。一方、ガウェインはランスロットに二度決闘を挑むが、毎朝ガウェインが正午までに力を増すという魔法がかけられていたため、ランスロットは決闘を遅らせていた。その後ランスロットはガラハッドの剣でガウェインを斬り伏せるが、命は助ける(ウルガタ版では、ヘクターに「とどめを刺せ」と促されている[65]。)。しかしガウェインの頭部の傷は、後にブリテン島でモルドレッドとの戦いの最中に再び裂け、致命傷となる。瀕死のガウェインから「赦し」を請い、モルドレッドとの戦いを支援してほしいと記した切迫した手紙を受け取ったランスロットは、軍を率いて急いでブリテンへ戻った。しかし到着すると、ソールズベリー平原(カムランの戦いのロマンス版)でアーサー王が戦死したとの知らせを聞くこととなった。
晩年と死
[編集]ランスロットの死には主に二パターンがあり、いずれも彼は最後の年を社会から隔絶された隠遁修道士として過ごすことにとなっている。『モルト・アルトゥ』のパターンにおける原典では、王の死を悼んだ後、ランスロットは社会を離れる。ただし、後にモルドレッドの幼い息子たちとそのブリトン人支持者、サクソン人同盟者に対する勝利の戦争に参加し、例外的に物語における自身の過去の役割に対する部分的な贖罪を行っている[66]。
この出来事はグィネヴィアの死の直後に起こり、ウィンチェスターの戦いで森を駆け抜けて追跡した末にランスロットが自らモルドレッドの息子の一人を殺害するが、彼自身は突然行方不明となる。ランスロットは4年後、ヘクター、ブレオベリス、そして元カンタベリー大司教のみに看取られ病死する。彼は王と王妃の傍らに葬られることを望んでいたが、以前からジョイアス・ガードでガレホートの隣に埋葬されるという誓いを立てており、その誓いを守るため同地への埋葬を願い出た。『後世版』では、ランスロットとガレホートの埋葬地と遺体は、後にマーク王がアーサーの旧王国を荒らす際に破壊される。
『アーサー王の死』に含まれているバージョンでは、モルドレッドの息子たちとの戦争はない[29]。その中で、グィネヴィアは円卓の騎士たちの破滅は彼女の不倫が原因で、それが後の悲劇の種となったと考え、修道女になる。グィネヴィアはランスロットの最後のキスを拒み、彼に自分の土地に戻るように、二度と彼女の顔を見ることはないから、と述べた。これを聞いたランスロットは、もし彼女が悔い改めの生活を送るのであれば、自分もそうすると宣言する[67]。ランスロットは贖罪を求めて隠遁生活に入り、彼の親族の8人も修道生活に加わる。その中にはヘクターも含まれていた。修道士となったランスロットは後に死にゆくグィネヴィア(彼女は修道院長になっていた)のために臨終の儀式を行った。夢のお告げで、ランスロットはグィネヴィアが死にかけていることを知り、彼女を訪ねるために出発したが、グィネヴィアはランスロットが到着する前に死んでしまうことを願い、そのようになった。グィネヴィアが言ったように、ランスロットは生きている間、彼女の顔を見ることはなかった。女王の死後、ランスロットと彼の仲間たちは彼女の遺体をアーサー王の隣に埋葬するために運ぶ。その後、絶望したランスロットの健康は衰え始め(『アーサー王の死』によれば、この時点でもすでに断食と祈りのために身長が1キュビト縮んでいたと記されている)、彼は女王の死から6週間後にこの世を去る。彼の8人の仲間たちはフランスに戻り、土地の管理を行った後、ランスロットの臨終の願いに従い、聖地への十字軍遠征に出発し、そこでサラセン人(マロリー版では「トルコ人」)と戦って命を落とす。『イサイ・ル・トリステ』という14世紀のロマンスでは、隠者がランスロットの掘り起こされた骨の腕を使って、匿名のトリスタンの息子を「世界で最も優れた騎士の手によって」騎士に任命する[68]。
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外部リンク
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